小松左京『日本アパッチ族』より 「四百五十円のカレー」

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“失業罪”で追放地に追いやられる主人公・木田福一が、
「家族に言い残すことはないか」と言われて
つい口走ったのは、カレーが食いたいということだった。

『「ライスカレーが食べたかった」と私は言った。
 「梅新のかどに四百五十円のカレーを食わせる店があるんや。
  一度食ってみたかったが…。
  四百五十円のカレーてなもん食うたことあるけ?」
 「四百五十円?」とお巡りは目をむいて言った。
 「わしら百五十円のかて、まだ二度しか食うたことがない」
 「なあ、わいは腹が減ってるんや」と私は細心の注意を払いながら言った。
 「昼飯食うてないんや。
  ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ行ってみいへんか。
  あれ食うたら、すぐにここへ帰ってくるわ。
  あんたかて昼飯食ってないんやろ」
 お巡りはあきらかに動揺したらしく、喉ぼとけがちょっと動いた。
 私の中に一縷の小さな望みが動いた。
 --世の中にはカレーとなると目のないやつがいるものだ。』


この本の初版は昭和46年。
その時代では450円のカレーが高嶺の花だったんだなあ。

もっとも、この小説の大半は“食鉄”描写なので、
導入部のこのシーンなど、殆ど印象に残らないかもしれない。
  
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